PHOTO © Ryogo Utatsu / Neoplus Sixten Inc.

密集市街地の光階段

密集市街地のささやかな恩恵を最大化すること
密集市街地の幅3.3mの北側前面道路と1.3mの南側路地に挟まれた、わずか45㎡の敷地に建つ建築面積26㎡の4人家族のための住宅である。南側の僅かな空地に、狭いながらも光環境を整えられる手がかりを感じる敷地であった。狭小密集地で最大限の床面積を確保しながらも十分な日照を得ることを目指した。
このような密集市街地は、私有地を供出しながらその区画内のインフラを整えたり、共同体としての広場や路として使っていたりする。ささやかな積み重ねが作っている環境に対し丁寧に呼応しながら、内的にはダイナミックに増幅させることを試みた。前面道路から路地への抜けを大きく取るべく居室ボリュームは西側に寄せた。境界には塀がないため新たな路地もできた。内部は、各階床をなるべく大きく取りながら重ね、日照を溜め込む縦に延びる階段室ボリュームと、床が積層される閉じた居室ボリュームをどちらも最大化し、床を確保しながらも大きな空間の光の質や気流が得られることを考えた。1階は、玄関から裏路地までコンクリート土間が続き、路地方向から2階へ上がる直階段とその上部には旋回する階段が掛かる。階段室は、外との連続と内部の上下の動きが絡み合う空間となっている。内部のダイナミックな動きの外に、1階であっても空が望め、2階からは斜向かいの桜が楽しめる。温熱環境としては、階段室を介した調整ができるよう、断熱性能をHEAT20のG1~G2の間の設定とし、低炭素建築物の認定を取得している。夏は3階のエアコンによる冷房、冬は1階のエアコンによる暖房、中間期は南側の窓を開け、各階居室側の小窓を開ければ換気がされることを考えている。
密集市街地の中で、ささやかな共有財産に目を向け丁寧に応えていくことで、内部の豊かさも増幅され、周囲にもささやかな貢献ができるのではないかと考えている。


No.255WType住宅Year2023Role建築設計監理Location日本・東京都Published「Japan-Architects」02/2023