K Clinic

気配だけを透す和紙のひかりかべ」
一般的にクリニックにおける診察室や処置室の壁は、透けてはいけないし、音が漏れてもいけない。必然的に遮断のための壁がたてられ「ビョウイン」らしい重苦しい空間が出来上がる。
しかし、高齢者の多い地方都市のクリニックは、医療の場としてだけでなく、近隣住民の交流の場としての役割を果たしている。そこでは、「ビョウイン」らしい重苦しい空間ではなく、「サロン」らしい明るく開放的な空間でありながら、しっかりとプライバシーが確保されたクリニックが求められる。
山口県光市にある当クリニックでは、下地の木軸組を透かした「気配だけを透す和紙のひかりかべ」で、開放的でありながらプライバシーが確保された空間を実現した。
障子のように桟を組み、両面に和紙を張って太鼓張りとした。和紙は上部から光を受けて柔らかくひかり、下地の木軸組や組子を程よく透かす。木軸組や組子が透けて見えることで、木の優しさが落ち着いたやわらかい空間を生み出す。太鼓張りにすることで、音が反響しクリアには透過しない。さらに、和紙は汚れたり破れたりした場合も容易に張替え可能なので、清潔感を保ちながら、新陳代謝・経年変化により味のある時空間を紡ぎ出していく。


No.018WType診療所Year2009Role内装設計監理Location日本・山口県Published商店建築 2011 vol.56 No.02